美しい翻訳をするためには、日本語での表現力が大切

短大の時の英語科の先生は、授業の度に「翻訳は創作だ」と繰り返していました。英語が特に好きなわけではなかったので、当時は特に気にもとめていなかったのですが、40歳で再び英語を勉強し始め、授業で文学作品の翻訳(和訳)をするようになって、「翻訳は創作」の意味がようやくわかるようになりました。私自身の訳文と、他の生徒の訳文とが、同じ英文を訳したものとは思えないほど違っているのです。一つの英単語に対応させて、日本語のどの言葉を選ぶかで、一文の印象がガラリと変わってしまうこともあります。

翻訳の面白さに気が付いてからは、意識的に翻訳家のエッセイなども読むようになりました。印象に残っているのは、たとえプロでも、翻訳をしている時に、どうしても適当な言葉が思いつかず、辞書を引いて見つけた言葉を使うと、その部分だけ浮いてみえるということです。借りてきた言葉を使うと、前後の文章と調和しなくなってしまうので、結局後になって書き換えることになるそうです。美しい翻訳をするには、英語の能力以上に、ボキャブラリーを含めた日本語での表現力が大切になるようです。